2025.11
吉村洋介

指数関数への当てはめをめぐって
   ~~ 1次反応の速度定数の決定法に関わって

このおはなしは、3回生の物理化学・物性化学実験 B3 に関わって用意した解説プリントを、 補充し改変したものです。

物体の冷却速度や反応速度に関わって、 種々の測定値の時間変化を指数関数に当てはめる作業が必要になります。

問題となるのは時刻 \(\{t_i\} ~~ (i = 1 \ldots N)\) における \(N\) 個の不確かさを含んだデータ \(\{y_i\}\) を 次のような指数関数に当てはめ、 最ももっともらしい速度定数 \(k\) を得る操作です。 時刻 \(t_i\) に不確定性はなく、 \(y_i\) のばらつきは \(t_i\) に関係なく同じであるとします。

\begin{equation} y = y_0 + A \rme^{-kt} \label{eq:expfunc} \end{equation}

実験では、得られたデータを市販の科学技術用のソフト(Igor Pro)で解析するわけですが、 そこで何が行われているのかをある程度は理解している必要があります。 このお話では、こうした非線形関数への最小2乗法の適用とその実際について、 少し事細かく眺めてみます。

この(1次反応)速度定数 \(k\) の逆数 \(\tau = 1/k\) を時定数 time constant あるいは緩和時間 relaxation time、 反応速度の分野では平均寿命 mean lifetime とも呼びます。 Igor Pro では当てはめに \(y = y0 + A \exp(-(x - x0)/\tau)\) という形で関数(exp_XOffset 関数)が用意されています。


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