OZ式をめぐって

C.密度分布に関わる積分方程式

光の散乱に密度揺らぎの空間的な相関が深く関わっていることが分かったところで、いよいよOZの論文での積分方程式の導出を見てみましょう(OZの論文はここから始まる)。まず空間を無数の微小な領域(以下、OZの論文では特に名前を付けていませんが、セルと呼ぶことにします)、0, 1, 2, ... に分割したとし、そのセルの体積はすべて同じで δv とします。このセルは、せいぜい 1 個の分子しか入れないぐらい小さいとします。

さて、あるセル 0 の粒子数の平均粒子数からの偏差 ν(0) の平均値<ν(0)>が、その周りのセルの粒子数の平均粒子数からの偏差 ν(i) の関数として次のように記述できるとします(OZの論文では ν(0) を ν0、f(0,1) を f1 という風に下付を使って表記していますが、事態を明確にするために引数として表すことにします。また平均を上に棒で付けて表現していますが、ここでは<>で囲って表すことにします):

OZEQ_C01   (C1)

ここで関数 f(i, j) は、他のセルの粒子数が与えられた時に、セル i に対してセル j から分子間の相互作用の結果及ぼされる影響を与えるものです。ですから f は分子間相互作用の及ぶ程度の範囲でしか値を持ちません。またより一般的には、ν(i)ν(j) など高次の項を考えないといけないのでしょうが、今の問題についてはこれで十分です(と原論文に注記がある)。

さて一方、あるセル1の粒子数の変動 ν(1) がもたらす他のセル 0 での密度の変動を考えて、次の関数 g を考えます(今日 g という記号は動径分布関数に使われますが、ここでの関数 g は全相関関数 h に数密度をかけたものに相当しています)。

OZEQ_C02   (C2)

この関数 g(0, ν(1)) というのは、(C1)式で考えた f(0, 1) ν(1) δv に相当するわけですが、(C1)式とはちがって、周りが密度の偏差が固定されておらず、全体が平衡状態にあるときの密度の変動を与えることに注意します。なお、議論の見通しをよくするため、原論文のように g(x0, y0, z0, ν(1)δv) などとせず、単に g(0, ν(1)) という記法を取ることにします。この関数 g を用いると平衡状態では、(C1)式中の ν(i) というのは g(i, ν(1)) で与えられるわけですから次のようになります。

OZEQ_C03   (C3)

この式は任意のν(1) について成り立つので、g(i, ν(1)) は次式のように書けるはずです:

OZEQ_C04   (C4)

あるいは

OZEQ_C05   (C5)

したがって(C3)式は次のように書けることになります。

OZEQ_C06   (C6)

ここでセルをどんどん小さくしていくと、(C6)式は積分の形にかけて、

OZEQ_C07   (C7)

という形になるでしょう。ここで問題は、f(0, 0)、g(0, 0) をどうとるかですが、これは任意なので 0 としておきます(と原論文に書いてある)。さらに等方性・均一性を仮定すれば f(0, 1)、g(0, 1) は相対距離のみの関数になりますから

OZEQ_C08   (C8)

これが今日、オルンシュタイン-ゼルニケの式として呼ばれるものです(今日の通常の表記では、g(r) はρh(r)、f(r) は ρc(r)。密度を下げ ρ → 0 とすると、f(r)、g(r) → 0 になるので、h、cを用いる表式のほうがよいと思いますが、だれがこの表式を導入したかは?です)。


前の節へ      次の節へ

OZ式の表紙ページに帰る