2001.8.14.
吉村洋介

モール塩の熱分解

モール塩は室温では、1週間おいても空気酸化は受けないが、加熱すると分解し700℃では酸化鉄(III)にまでなる[Rheineck ]。このようすは、下図に示すように、最初期の熱天秤を用いた研究ですでに調べられている[Shibata ]。

MOHR_TBALANCE

モール塩は100℃で水を失い、170℃で1個のアンモニアを失うとともに硫酸鉄(III)に酸化されるという。さらに加熱するとさらにアンモニアを失い 290℃でFe2(SO4)3・(NH4)2SO4に、420-490℃で硫酸アンモニウムを失って硫酸鉄(III) Fe2(SO4)3となり、650-710℃で酸化鉄(III) Fe2O3になるとのこと。

References

[Rheineck] H. Rheineck, Dingl. J. 202 269 (1871).
[Shibata] Z. Shibata and M. Fukushima, Bull. Chem. Soc. Jpn. 3, 118 (1928).
現報は:柴田善一・福島政治、金属の研究、4、108 (1927)らしい。この報文は、本多式熱天秤を、電磁式にした改良型の最初の報文。 なお "熱天秤 thermobalance" というのは、本多光太郎によって初めて製作・命名されたとのこと(東北帝国大学理科報告、4、97 (1915)。[斎藤])。
[斎藤] 斎藤平吉、熱天秤分析、技術書院(1962)。斎藤平吉は化学教室の有機の出身(1917年卒)。


モール塩の合成と分析ノートへ返る