2022.10
吉村洋介
化学実験 資料編

種々の水溶液の密度

400 g まで 0.01 g 程度の精度ではかれる電子天秤が普通に使えるようになり、 実験に当たって、容量ではなく、重さで試薬を調製する機会が増えてきました。 以前にもまして、溶液の濃度と密度の対応を知る必要が出てきたように思います。 ここでは種々の溶液の常温常圧での質量百分率とモル濃度、密度の関係を、 市販試薬の濃度と密度とともに紹介しておきます。

1.種々の水溶液の密度(20 °C)

ここでは学生実験で出会う、塩酸アンモニア水(海外ではもっぱら「アンモニア溶液」と呼ばれるようになりました)、 硫酸酢酸水酸化カリウム水酸化ナトリウム塩化ナトリウム塩化カリウムについて、 溶液の、常圧、20 °C での質量百分率とモル濃度、密度の関係をまとめておきます (この道では、伝統に沿って 20 °C を標準に取るのが、今も普通です)。 実際に必要になる精度は、せいぜい2ケタか3ケタというところですが、 元のデータブック(CRC Handbook of Physics and Chemistry 2012)にならって 1/10000 のオーダーまで記載しておきます。 なお各表の最初の行には、データブック記載のデータを多項式に当てはめた結果から計算した、 モル濃度と密度を表示するようにしました(内挿値だと思ってください)。 質量百分率(mass%)の欄に数値を入れ、各表の「計算」ボタンを押してみてください。 硫酸・酢酸については最終ケタが 5 程度ずれることがありますが、だいたい 1 程度のずれに止まります。

表 1.塩酸  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
51.4031.0228
102.8731.0476
206.0231.0980
309.4561.1492
3611.6421.1791
表 2.アンモニア水  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
52.8680.9770
105.6220.9575
2010.8370.9228
2814.7640.8980
3015.7130.8920

表 3.硫酸  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
50.5261.0318
101.0871.0661
202.3241.1398
303.7291.2191
405.3131.3028
507.1131.3952
609.1681.4987
7011.4941.6105
8014.0881.7272
9016.6491.8144
9617.9661.8355
10018.6631.8305
表 4.酢酸  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
50.8371.0052
101.6851.0121
203.4141.0250
305.1801.0369
406.9771.0474
6010.6201.0629
8014.2281.0680
9015.9531.0644
10017.4471.0477

表 5.水酸化カリウム溶液  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
50.9291.0419
101.9381.0873
204.2131.1818
306.8511.2813
409.8961.3881
5013.3891.5024
表 6.水酸化ナトリウム溶液  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
51.3171.0538
102.7721.1089
206.0961.2192
309.9581.3277
4014.3001.4299

表 7.塩化ナトリウム溶液  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
50.8851.0340
101.8321.0707
203.9281.1478
244.8471.1804
表 8.塩化カリウム溶液  
mass%mol/Lρ/g cm-3
0.0000.9982
50.6911.0304
101.4261.0633
203.0391.1328
243.7421.1623

2.市販試薬の濃度と密度

市販試薬で頻用する酸・塩基の水溶液について、 心得ておくべきおよその濃度、密度の値を表にまとめておきます。 表の値は学生実験で使用するもので、異なる濃度のものも市販されているので注意が必要です。 例えば硝酸については 65~70 mass%程度のものも普通に市販されています (硝酸を蒸留濃縮すると68 mass%程度で共沸混合物となります。69 mass%ぐらいのものは、 密度が公称 1.42 g cm-3 なので硝酸(1.42)、65 mass%ぐらいのものは硝酸(1.40)、 などと表記されたりします(JIS K8541 参照))。 またアンモニア水にも 25 mass%のものがあり(RoHS 適合)、最近はむしろ主流になりつつあるようです。

表 9.市販試薬の濃度と密度の概略
試薬mass%mol/Lρ/g cm-3
塩酸37121.19
硫酸96181.84
硝酸60141.38
アンモニア水28150.90

古い本では、モル濃度 mol/L ではなく規定度 N で表示してあることがあります。 規定度は溶液 1 L が授受する水素イオンの物質量に相当し、たとえば 1 mol/L硫酸は2 N 硫酸に相当します。 なお分析化学の実験で「共沸塩酸」と呼ばれる、 20 mass% 程度の塩酸が、 標準試薬として利用されていたことがあり、 今もカタログには掲載されていたりします。


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