400 g まで 0.01 g 程度の精度ではかれる電子天秤が普通に使えるようになり、 実験に当たって、容量ではなく、重さで試薬を調製する機会が増えてきました。 以前にもまして、溶液の濃度と密度の対応を知る必要が出てきたように思います。 ここでは種々の溶液の常温常圧での質量百分率とモル濃度、密度の関係を、 市販試薬の濃度と密度とともに紹介しておきます。
ここでは学生実験で出会う、塩酸、アンモニア水(海外ではもっぱら「アンモニア溶液」と呼ばれるようになりました)、 硫酸、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、 塩化ナトリウム、塩化カリウムについて、 溶液の、常圧、20 °C での質量百分率とモル濃度、密度の関係をまとめておきます (この道では、伝統に沿って 20 °C を標準に取るのが、今も普通です)。 実際に必要になる精度は、せいぜい2ケタか3ケタというところですが、 元のデータブック(CRC Handbook of Physics and Chemistry 2012)にならって 1/10000 のオーダーまで記載しておきます。 なお各表の最初の行には、データブック記載のデータを多項式に当てはめた結果から計算した、 モル濃度と密度を表示するようにしました(内挿値だと思ってください)。 質量百分率(mass%)の欄に数値を入れ、各表の「計算」ボタンを押してみてください。 硫酸・酢酸については最終ケタが 5 程度ずれることがありますが、だいたい 1 程度のずれに止まります。
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 1.403 | 1.0228 |
10 | 2.873 | 1.0476 |
20 | 6.023 | 1.0980 |
30 | 9.456 | 1.1492 |
36 | 11.642 | 1.1791 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 2.868 | 0.9770 |
10 | 5.622 | 0.9575 |
20 | 10.837 | 0.9228 |
28 | 14.764 | 0.8980 |
30 | 15.713 | 0.8920 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 0.526 | 1.0318 |
10 | 1.087 | 1.0661 |
20 | 2.324 | 1.1398 |
30 | 3.729 | 1.2191 |
40 | 5.313 | 1.3028 |
50 | 7.113 | 1.3952 |
60 | 9.168 | 1.4987 |
70 | 11.494 | 1.6105 |
80 | 14.088 | 1.7272 |
90 | 16.649 | 1.8144 |
96 | 17.966 | 1.8355 |
100 | 18.663 | 1.8305 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 0.837 | 1.0052 |
10 | 1.685 | 1.0121 |
20 | 3.414 | 1.0250 |
30 | 5.180 | 1.0369 |
40 | 6.977 | 1.0474 |
60 | 10.620 | 1.0629 |
80 | 14.228 | 1.0680 |
90 | 15.953 | 1.0644 |
100 | 17.447 | 1.0477 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 0.929 | 1.0419 |
10 | 1.938 | 1.0873 |
20 | 4.213 | 1.1818 |
30 | 6.851 | 1.2813 |
40 | 9.896 | 1.3881 |
50 | 13.389 | 1.5024 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 1.317 | 1.0538 |
10 | 2.772 | 1.1089 |
20 | 6.096 | 1.2192 |
30 | 9.958 | 1.3277 |
40 | 14.300 | 1.4299 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 0.885 | 1.0340 |
10 | 1.832 | 1.0707 |
20 | 3.928 | 1.1478 |
24 | 4.847 | 1.1804 |
mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|
0.000 | 0.9982 | |
5 | 0.691 | 1.0304 |
10 | 1.426 | 1.0633 |
20 | 3.039 | 1.1328 |
24 | 3.742 | 1.1623 |
市販試薬で頻用する酸・塩基の水溶液について、 心得ておくべきおよその濃度、密度の値を表にまとめておきます。 表の値は学生実験で使用するもので、異なる濃度のものも市販されているので注意が必要です。 例えば硝酸については 65~70 mass%程度のものも普通に市販されています (硝酸を蒸留濃縮すると68 mass%程度で共沸混合物となります。69 mass%ぐらいのものは、 密度が公称 1.42 g cm-3 なので硝酸(1.42)、65 mass%ぐらいのものは硝酸(1.40)、 などと表記されたりします(JIS K8541 参照))。 またアンモニア水にも 25 mass%のものがあり(RoHS 適合)、最近はむしろ主流になりつつあるようです。
試薬 | mass% | mol/L | ρ/g cm-3 |
---|---|---|---|
塩酸 | 37 | 12 | 1.19 |
硫酸 | 96 | 18 | 1.84 |
硝酸 | 60 | 14 | 1.38 |
アンモニア水 | 28 | 15 | 0.90 |
古い本では、モル濃度 mol/L ではなく規定度 N で表示してあることがあります。 規定度は溶液 1 L が授受する水素イオンの物質量に相当し、たとえば 1 mol/L硫酸は2 N 硫酸に相当します。 なお分析化学の実験で「共沸塩酸」と呼ばれる、 20 mass% 程度の塩酸が、 標準試薬として利用されていたことがあり、 今もカタログには掲載されていたりします。