2003.5.11.

日本物理化学研究会創立総会(1937年3月3日)速記録から

読みやすくするため、新字新かなにし、句点を入れたり、一部漢字をかな(「洵に」→「まことに」など)にしたりしてあります。

日本物理化学研究会創立総会での挨拶 藤井顧問

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私どもが考えていることは、先生方からお話下さいました。 とにかく日本の国はだいぶ化学工業が進歩したようでありますけれども、元は化学工業は余り発達していなかったのであります。 もっとこれをやらなければならぬと考えまして、そいつをやるには物理化学の研究をやらなければならぬ。 どうして物理化学を進歩させるかということが大問題だと考えまして、松井先生、櫻井先生、堀場先生、そして皆さん方がここへお集りになりましたが、どうも化学が進歩するためには先生方のお力によらなければならね。 一人や二人ではいけない。 どうか日本のためにまた世界のために御協力していたゞきたいと思います。

化学の進歩ということについては今まで先生方がお話になって、もう私ちっとも申上げることはございませぬ。 少しお金を差上げましたが、これをその研究費にお使い下さいまして、そうして化学工業に関係する方々、あるいはその外の資本家の方からもう少し資金を差出して下さいまして、この事業を大きくして行く。それならば目的を達せられるぢやないかと思います。


自分はもう耄碌しておりまして何もできませぬから、事業界からすっかり引退して隠居のようであります。 それにつきましては、皆さんの努力に俟つよりしかたがない。 皆さんがどうか共同して立派な化学日本、 少くとも東洋におけるドイツ位にして戴きたいということ、これはどうも皆さんの力でできやしないかと思います。 どうか一つ研究なすって、そうして新らしいことを御考えになってドイツに負けないようにして戴きたい。 そういう希望を、それだけ皆さんにお願いしておきます。(拍手)


堀場常務理事: 顧問をお願いしました上田中将閣下が出られないので皆さんに宜しくとの事でございます。 これを以て閉会といたします。

閉会 午後6時半
(文責記者)


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