2001.4.5.
「物理化学の進歩」17巻(1943)より

ちょっと当時の紙面の感じを出すために、旧字旧かなで再現してみました。 なおここでいう「会(會)」は「物理化学研究会」のこと。


大幸先生の写真と紹介

PROF_OSAKA

會長理學博士大幸勇吉先生の喜壽を迎えて

本會會長理學博士大幸勇吉先生は昨年末喜壽を迎えられ彌々御健勝に渡らせ らるゝ事會員―同の喜びは勿論我が國學界の慶賀の至である.先生は慶應二年 十二月廿二日加賀の國大聖寺に誕生あらせられ,化學に就ては本會の顧問たり し故櫻井錠二先生に師事せられて明治廿五年東京帝國大學を卒業せられた.そ の後第五高等學校の敎授を經て東京高等師範學校の敎授に御就任,明治三十二 年獨乙國に御留學,物理化學の創設者たるオストワルド及びネルンスト敎授の 許にて御研究,物理化學上不滅の業績を残して歸朝せられ明治三十五年には理 學博士の學位を得られた.その後明治三十六年の秋京都帝國大學敎授に御就任, 爾来大正十五年停年御退職に至る迄二十有餘年間物理化學敎授として本邦の物 理化學の建設よりその發達に至る迄絶大なる功績を擧げられし事は周知の事で ある.又一方本邦化學教育界に盡されし功勞等先生が學界に残されし威大なる 業績は今更こゝに述べる迄も無い.京都帝國大學御退職後も同學名譽教授とし て又帝國學士會會員として學界各方面に御盡瘁,今尚後進の誘掖につとめられ 本會を統率せられつゝある次第である.大東亞戰争下化學振興の最緊要なる時 に當り先生の如き學界の長老を有する事は我が國の誇りであり,茲に先生の高 壽萬歳を祝し巻頭に先生の近影を載せて會員にその喜びを頒かたんと思ふ.

昭和十八年―月


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