2025.5 / 2024.6
吉村洋介
ギブズ-コノバロフの法則の周辺

3.おしまいに

定年までの数年、流体化学分科の修士課程の優秀な学生諸君と、 2 成分混合流体の相挙動を検討する機会を得ました。 その時ギブズ-コノバロフの法則が、 学生諸君にまったく知られていないことに驚きました。 ネットで検索してみると、 海外のサイトにはギブズ-コノバロフの法則(定理、規則) Gibbs-Konovalov law (theorem, rule) がさかんに登場するのに、 日本語のサイトは寂しい限りです。 また日本では物理化学の教科書は元より、材料系の関連の教科書にも、 ギブズ-コノバロフの法則への言及が見当たらないようです。 「なぜ相線の頭(尻)が丸くなるのか」「なぜ気液の相線が接するのか」というのは素朴な疑問でしょうし、 それに答える熱力学的な説明も、(元祖ギブズがすでに展開したように) 通常の化学熱力学のコースにすんなり収まるものです。

というところで、ギブズ-コノバロフの法則を紹介するページを作ってみました。 混合流体の気液平衡や共沸現象自体への関心も持ってもらえるように、 実験室で触れる機会の多い液体に関わって、Dortmund Data Bank から、 容易にアクセスできるデータを用いて、できるだけ生の実験値にもとづいて共沸現象の紹介も試みてみました (Dortmund Data Bank (DDB) は、 気液平衡に関わる多分世界最大のデータベースで、学生一般向けのサービスも充実しており、 ぜひ利用していただきたいものです)。

何かの参考になれば幸いです。 また例によって、とんでもない間違い、思い違いなどあるかと思います。 その分にはご指摘、ご教示いただければ幸甚です。

追記(2025.5):ギブズの論文の邦訳が出版されていることを知りました:
  廣政直彦・林春雄 訳「ギブス 不均一物質の平衡について」、2019 年、東海大学出版部 ISBN 978-4486018612
いささか高価ですが、訳者の方々の労を多とするとともに、 こうした古典に自国語で接することができることを喜びたいと思います。 なお Gibbs は、しばしば「ギブズ」でなく「ギブス」と呼ばれています。 また「ギッブス」とされていることもあります。 (理化学辞典(岩波)やWikipedia によると ギブズ /gIbz/です (Oxford 辞書にある由))


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