高温度を得るに最も簡単な方法はバーナーにて熱することでバーナーに充分空気を送入する時には焔の先端は1500 °C位に上昇する。 普通実験室用としてはリングバーナーを用いる事多く周囲にイソライト、アスベスト等の保温剤を以って包みたる中にガスと空気とを吹き込むならば、大なる容積の物体を熱する事ができる。 この型の炉は種々のものが発売されている。 もしも空気の代りに酸素ボンベよりの酸素を送るならばさらに高温度になる。 一般に鉄製円筒の周囲に保温剤例えば石綿粉末とカオリン、マグネシアを捏ね合わしたものを塗りよく保温に耐えるものとし、 しかる後鉄製円筒内に高温においても安定な物質例えぼ、Cenco hyvac oil等の油類を入れ之を炉として実験用に使用する。 またその炉を恒温槽の役目をも持たせるために作ったものにナイターバスがある。 ナイターバスは鋼鉄製円筒の外囲を石綿板にて包み、その上を石綿粉末とカオリン、マグネシアを捏ね合わせたもので塗り、なお保温を完全ならしめるためにイリライト煉瓦でその周囲を包囲する。 そして鋼鉄製円筒内にはKNO3とNaNO3の等分子混合融液を入れ円筒の下部をリングバーナーにて熱する。 かくして上述のオイルバスもナイターバスもともに300 °C附近の温度を出すことができる。 後者の場合は恒温的性質を持ったものができ上るから高温(250 °C-600 °C)の反応速度測定等には最も適したものの一つであろう。 ただナイターバスは冷却した場合に鋼鉄製円筒内のKNO3およびNaNO3は凝固するから、その内部の反応容器その他温度調節器等を破損する場合がある。 故に少くとも実験操作中は半年、一年といえども継続してガスの火を消さぬようにしなければならない。 もしガスの火のとまるような時はあらかじめ通知をしてもらって、鉄製円筒内の物でKNO3およびNaNO3以外のすべてのものは除去しておくことが肝要である。 もしかかる事が絶対できぬ実験であれば、あらかじめ鉄製円筒の外囲を石綿板にて包みたる上をニクロム線で巻き電気的に加熱できるようにして置く必要がある。 次に上述のオイルバスならびにナイターバスの最適温度を下に記してガス炉についての記載は終る。
| オイルバス 室温~200 °C | ナイターバス 250 °C~500 °C |
(ナイターバスについては物理化学の進歩第4巻77ページ参照)
一定の温度を長く保つとか又は正確に濃度を測りながら熱するというような場合に対しては電気炉を用いるのが便利である。 電気炉には種々の型があるが一番簡単なのは金属線の抵抗を利用したものである。 今針金を流れる電流の強さを I アムペアとし、針金の抵抗を W オームとすると一秒間にそこに発生する熱量 Q は次式による。すなわち
Q = I2W (単位ジュール)
Q = 0.2388 I2W (単位カロリー)
そこでできた熱を外へ逃さないように保護するため前述の如くアスベスト板等の保温剤にて金属線の上を充分巻いておく。 保温に対する工作は前述のナイターバスの場合と同様である。 ただ加熱物体を入れる円筒は電気炉の場合は素焼筒あるいは外囲をアスベストにて覆いたる鉄製円筒等を用いる。
金属線としてニクロム線を用ひた電気炉では 800 °C 位より高くしてはいけない。 それはニクロム線が酸化してしまうからである。 素焼筒に白金箔を巻きつけたものは普通へロイス(Heracus)電気炉として売っている。 これは横倒しになったのも縦になったのもある。横のは管を熱するとき等に便であるし、縦のはルツボ等を熱するのに便利である。 この種の炉は1400 °C あたりまで熱し得る。 ただし長く続けて熱する場合には1200 °C 位より以下にしておく方が炉のためによい。 1400°~1500 °C 以上の高温を要するときには、炭素抵抗炉かまたは電孤炉を用うべきである。 炭素抵抗炉の一種にクリプトル(Kryptol)炉というのがある。 陶製の二重筒の中間に炭粒を充たし、その両端を石墨環にて押えてある。 この環を電板として電流を通ずれば炭素粒は熱せられる。 又ヘルベルゲル(Helberger)の炉というのがある。 これは石墨製のルツボを電極間に挟みそれに強電流(8-10ボルト、700-800アンペア)を通ずると、石墨ルツボは熱せられ容易に2500 °Cあたりの温度に達し得る。 この炉にはそれ専用の変圧器が付属している。 さらに電気炉には電孤を用いるのがある。 これは石墨製のルツボの中に熱すべき物質を入れ、これを石墨の台の上に置き、上から直径 2-3 cm 位の炭素棒を入れ、この炭素棒とルツボとの間に電孤を生ぜしめるのである。 電流は30ボルト30アンペア前後を要する。 または横から二本の炭素を入れこの間に電孤を生ぜしめる炉もある。 また誘導炉(Induction furnace)といってコイルに強い交流を通じてコイル中に置いてある導体またはそれで作られた容器の中に感応電流を生じ、 熱効果(普通2500 °C位まで)を起さしめる高温電気炉として便利な炉もある。 次に上述の電気炉をまとめてこの項を終る。
| 電気炉 | 抵抗炉 | ニクロム線抵抗炉 | 室温~800 °C |
| へロイス電気炉 | 室温~1400 °C | ||
| 炭素抵抗炉 | 500 °~2500 °C | ||
| 孤光炉 | 3500 °Cまで適当 | ||
| 誘導炉 | 2500 °Cまで適当 |
ガス炉に比較して電気炉の特徴は
である。(電気炉については武井武著、電気炉、向井幹夫著、電気炉、八木榮著、電気炉、参照)
以上炉について述べたが室温から 800 °Cあたりまでの炉としてはニクロム線抵抗炉が最も一般に用いられている。 当教室ではまたナイターバスをも使用している。