恒温槽は1)物理的定点を利用するもの、2)人工的に加熱又は冷却するものとの二種に大 別しうる。
1)物理的定点を利用するもの
a)0 °Cの場合
氷と水とを絶えず撹拌する。
b)0 °Cより少し低い場合。
氷を稀薄なるアルコール中に入れよく撹拌する。 この場合は氷の融けるに従い徐々に温度が昇る。
c)寒剤数例
| エーテルと固形炭酸 | -79 °C |
| 雪と CaCl2·6H20(6:4) | -51 °C |
| 雪と食塩(2:1) | -21 °C |
| 硫酸ソーダと塩酸(8:5) | -18 °C |
| 硝酸アンモニアと水(1:1) | -15 °C |
d)液態の沸点を利用する場合
器内の圧力を変えて、種々の温度を得る。
| 塩化メチル | -24 °C |
| エチレン | -103 °C |
| メタン | -164 °C |
| 酸素 | -182.8 °C |
| 一酸化炭素 | -190 °C |
| 窒素 | -195.7 °C |
| 水素 | -252.5 °C |
| ヘリウム | -268.7 °C |
| 液体空気 | 約-190 °C |
2)人工的に加熱又は冷却するもの
a)室温より少し低い恒温槽
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最も簡単には第23図の如く、氷で冷却した冷水を用いる。 即ち温度が昇れば水銀が排水孔を塞ぎ冷水は水槽に入り、降れば排水口を通じて外部に棄てられる。 此際排水管の水の出口が高さが水槽への流出管より下にあることが必要である。 これと同様にして精密なる恒温槽を第24図〔森口、日化、53、381(1932)〕に示す。 aに寒剤にて冷却せる冷水を貯える。 c は恒温槽の温度調節器で、d なる継電器で働作させそれを e なるモーターに通じ、f なるポンプを動かしまたは停止せしめて温度調節を行う。 この装置で8 °C~10 °C までの範囲ならば±1/1000 °C 以下の精度を有す。 この際寒剤は氷食塩を用い、液はアルコール水溶液を用う。
b)更に低温の場合
冷却には液態空気を用い、槽内の液としては次の数種がある。
| 塩水 | (-40 ~ 120 °C) |
| パラフィン油 | (-40 ~+75 °C) |
| 石油エーテル | (-130 ~+40 °C) |
| アセトン | (-94 ~ +56 °C) |
| エチルアルコール | (-114 ~ +78 °C) |
| トリュオル | (-95 ~ +110 °C) |
| イソペンテーン | (-160 ~ +28 °C) |
| プロペーン | (-190 ~ -45 °C) |
| プロピレン | (-190 ~ -48 °C) |
温度調節器には、炭の低温におけるガス吸着(アルゴン)を応用し、圧力変化による水銀柱の昇降で電路を断続するもの(第25図参照)および銅器内のペンタンの体膨張を利用して、 電熱回路を断続、又は電磁的に液態空気の供給を調節するもの等がある。(第26図参照)
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実例として最も優れたものは原、篠崎〔工化、29、26(1926)〕の恒温槽で(第27図参照) 1.4 L のペンテーンを -100 °C に保つに 3 L の液態空気で 30 時間保持し得る。 温度範囲は0 °C ~ -150 °C の間で精度は0.02 ~ 0.03 °C である。 なおブテンを使用すれば、-180 °Cまで可能である。
3)追補
a)寒暖計について
| 1)水銀寒暖計 | -30 °C迄 |
| 2)アルコール寒暖計 | -80 °C迄 |
| 3)トルエン寒暖計 | -120 °C迄 |
| 4)ペンタン寒暖計 | -50 ~ -190 °C |
| 5)白金抵抗寒暖計 | -200 °C迄 |
| 6)鉛抵抗寒暖計 | -200 °C以下の低温に用いる。 |
| 7)熱電対 | |
| 8)蒸気圧寒暖計 |
b)低温の標準点して用いられる物質及び融点
| 四塩化炭素 | -22.9 °C |
| 水銀 | -38.87 ° |
| クロロベンゼン | -45.2 ° |
| クロロホルム | -63.5 ° |
| 炭酸(沸点) | -78.5 ° |
| 酢酸エチル | -83.6 ° |
| トルエン | -95.1 ° |
| ニ硫化炭素 | -111.6 ° |
| エチルエーテル | -116.3 ° |
| メチルシクロヘキサン | -126.4 ° |
| イソペンタン | -159.6 ° |
| 酸素 | -182.8 ° |