2003.5.10. last rev. 2022.3.3.
読みやすいように、新字新かなにし、漢字表記など改めています。

聖戦今や第3年を迎えんとしている。吾等の研究室出身者もその1割近くが剣を執り銃を手にして親しく興亜の大業に従事している。 この時に当たって吾人研究室にあるものは第一線勇士と同様の決心を以って専心研究に従事し化学報国の実を挙げる他なにものも無いのである。

研究は勿論立派なる成績を挙げる事が第一である。然し一面いかにして早く結果を出すべきかという事が亦極めて重要の問題である。 研究室の先輩諸氏がここに新しく吾人の研究室に来る人々のために多年の経験を基にしてこの一書を編纂せられた。 あえて一般世に問う物理化学実験書では無いが各項皆自らの体験による尊い結晶である。而して後輩を誘導しようという美しい奉仕の精神から出来たものである。 不肖吾が物理化学研究室の責任者となって既に十数年、自ら何等なす処なかりしを常に恥ているが、幸に研究室に集る優秀なる若き学徒諸氏が、小にしては研究室のため、 大にしては吾が国化学界のため、尊き時間を割いて幾多犠牲的の仕事をして下さった事を何時も心から感謝している。 此の一書もまたその一つであって、後輩を誘おうとする温い心よりなる努力の一端である。

新しく吾が研究室に来られる元気に溢るゝ化学者よ。緒言にあるが如く本書を充分に利用する事により諸君の研究の成果を一日も早く奉げらるゝ事を希望すると共に、 本書の編纂によっても窺われる吾人の研究室の精神を理解せられん事を切望する。

昭和14年6月
堀場信吉

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